外人の友達から聞いた話です。彼は、ハイスクールに入学して、バイトで稼いだお金で、真っ先にタキシードのパンツを買ったそうです。そして、蝶タイ・カマーバント・シャツと順次買い揃え、卒業パーティの直前に、ようやく白のタキシードジャケットを手に入れた、との事です。「オンナノコニ、モテタカッタカラネ…」と、彼は笑ってました。
礼服は、普通一揃いセットで売られています。ズボンだけ単品で売ってません。「正しい礼装」しか知らない人は、礼服は一揃いセットで着るものと、決めています。従って、着用の機会は殆ど無く、せっかくお求めの礼服を、箪笥の肥やしにしているか、着用のその都度、貸衣裳屋さんの御世話になってます。
タキシード会議の「楽しい礼装」を知っている人は、礼服を上着とズボンに分けて、それぞれを色々な服・シャツ・小物と組合わせて、色々なパーティに相応しい、その人らしい礼装で、パーティを楽しんでいます。着用の機会も沢山あります。
タキシード会議から御願いです。日本でも、タキシードのジャケットとパンツを別々に買えるお店ありませんか。御存知の方は、ぜひ教えて下さい。
そのチェックポイントは?と聞かれても、礼服が一揃いセット販売の現状では、難しい質問です。
流行に左右されない定番品の礼服をお求めになれば、ズボンも、流行に左右されない定番品が付いてくる筈です。
ズボンも流行で、太くなったり、細くなったりしますが、裾幅24cm前後のものを選べば、流行に左右される事はありません。
コールズボン(モーニングの縞ズボン)も、アスコットタイも、どちらも、昼間の礼装の象徴です。日が暮れてから用いられる事は、有りません。
元来モーニングは、朝のウォーキングウェア。上着のデザインは、時代によって変化しましたが、一貫して変わらないのが、縞のズボンとの組合わせ。昔も今も、これさえ穿けば 「アスコットな礼装」と、世界の多くの人々が認識致します。
礼服モーニング一式の中に組込まれています。昼間の格式あるセレモニーに。
最近は、ブラックスーツ(略礼服)の上着と組合わせた ディレクターズスーツ(昼間の礼装)が、流行の兆し。夕暮れ迄の結婚式・披露宴、花嫁のお父様・御仲人様に御薦めします。
タキシードのパンツには、燕尾服に次ぐ礼装の印として、パンツの脇の縫い目に沿って、必ず側章(飾りのブレード)が、縫付けてあります。
正しい「タキシードの正礼装」は勿論の事、その時々の流行の色々なジャケット・シャツ・小物を組合せた、楽しい「タキシードな楽礼装」で、色々なパーティが楽しめます。
蝶ネクタイと黒のタキシードパンツで「タキシードな礼装」と、世界の多くの人々が認識致します。
タキシード一式…フルドレス。こんな着方は、タキシードの本場アメリカの人々も、滅多にしません。一年に一度、有るか無しでしょう。
「○○○○○ 蝶タイすれば タキシード 」「立衿のシャツで よりフォーマルに」「タキシードパンツ カマーバンドで もっともっとフォーマル」
○○○○○には、ジャケット・ブルゾン・カーディガン・革ジャン・Gジャン・等々、色々な服の名を入れて下さい。上着無しでも、パーティの場によっては、その場に相応しい「タキシードな楽礼装」です。楽しいパーティは、沢山あります。この着方・着こなし、パーティシーズン12月には、一週間に十日も有るかも知れません。
ズボンに側章が付けられたのは、18世紀末から19世紀にかけての頃。軍服のズボンに採用されのが、始まりとされています。
ズボンの形が、キュロット(半ズボン)からパンタロン(長ズボン)に変って間もなく、騎兵・歩兵・砲兵・工兵等、兵種毎の色分けに用いられました。これも、ナポレオンの軍隊が最初とか・・。
次に、燕尾服は側章2本、タキシードは1本と決めているのは、日本だけかも知れません。
何故なら、私共のHPの着こなし解説『着るモノ』1.服「タキシードの歴史」の、タキシード伝説の真相について、の記述に間違いが無ければ、燕尾服もタキシードも、側章は1本の筈です。
この事は、スタイル社刊『エスカイア版、20世紀メンズ・ファッション百科事典』のフォーマル・ウェア(夜間)の項の記述「ズボンは、・・・燕尾服の場合には、2本ついたものを選ぶのは、任意である』(エスカイア1940年11月号より)で、証明されました。
恐らく、1920年代・30年代にタキシードが、燕尾服に次ぐ準礼装として、世界の国々で認知された際に、何処かの誰かが、正・準の格差をはっきりさせる目的で、燕尾服に1本増やしたのが始まりかも知れません。それを当時の宮内省・外務省が、そのまま踏襲したものと思われます。
20世紀に入り、サスペンダー(ズボン吊り)に代わってベルトが用いられる様になり、ズボンにベルト通しが、付けられました。そして、ベルトをぎゅうっと締めた際に生じる、ズボンのウエスト回りの皺を処理する為に、タックが取られる様になりました。
従って、タキシードを初め、それ以前に確立した礼服には、ベルト通しもタックも無いのが、普通です。
しかし、私共では着心地良く、動き易くとの配慮から、タキシード会議ショップのタキシードパンツには、1本タックを取り、更にアジャスターを付けて、ウエストにピッタリ、フィットする様に致しました。
尚、ベルト通しは有りませんので、必ずサスペンダーを用いて下さい。タキシードパンツをスッキリ恰好良く見せる為、ズリ下がって、だらしなく見られない為です。
「礼服にマッキン(ズボンの裾の折返し・ダブル)とフレンチ(ダブルカフス)は無し」1925年創業の親父の口癖でした。
礼装タキシードは、燕尾服のテールコートに替えて、スモーキングジャケットを組合せた着方から生れました。礼服タキシードも、燕尾服のズボンを踏襲していますので、タキシードパンツの裾は、折返し無しのシングルです。
マッキン(ズボンの裾の折返し・ダブル)は、第25代アメリカ大統領(1897−1901)ウイリヤム・マッキンリーが地方遊説の時、ぬかるみの道をズボンの裾をまくって身軽に歩いたのが、始まりとか。
ダブルの裾はカジュアルですので、フォーマルに用いる事はありません。
通常ダブルの裾はカジュアルですので、フォーマルに用いる事はありませんが、裾がダブルのズボンであっても、貴方様が気にする程、他の人は気にも留めません。
民主主義社会の現在、セレモニー・レセプション・パーティでの参列者・出席者どうしの距離・間隔は、ぐっと短くなりました。特に立食パーティでは、上半身しか見えません。貴方の足元に目ゃる人は、誰もいません。自信を持って堂々と、振舞って下さい。